2012 年 5 月 15 日 (米国時間)、Enhanced Mitigation Experience Toolkit (EMET) の最新版となる EMET 3.0 を公開しました。
EMET とは?
EMET (エメット) は、任意のアプリケーションに対して DEP (Data Execution Prevention) や ASLR (Address Space Layout Randomization)、SEHOP (Structured Exception Handler Overwrite Protection) など計 7 つの「脆弱性緩和技術」を簡単に導入できる無料ツールで、ソフトウェアの脆弱性が任意のコード実行等で悪用されるのを防止します。EMET の詳細は過去のブログ「X’mas ギフト」(後半) および「EMET の新しいバージョン V2.1 をリリースしました!」でも説明していますのでご参考ください。
EMET による防御のイメージ
下図 2 が EMET による防御のイメージです。セキュリティ更新プログラム未適用のソフトウェアの脆弱性が攻撃された場合でも最終的な悪用 (コード実行) を防ぐことができます。多層防御の観点で、セキュリティ更新と併用することで、組織や個人の資産をより確実に守ることができます。
図 1: セキュリティ更新プログラムにより攻撃が防御されるイメージ
図 2: 緩和策の設定によりセキュリティ更新未適用のソフトウェアの脆弱性 (0-day 含む) に対する 悪用 が回避されるイメージ
EMET 3.0 の新機能
使い勝手の観点で以下の 3 つが追加されています。
- 構成を容易にする “プロファイル”
- グループ ポリシーや SCCM との連携
- レポーティング機能
1.構成を容易にする “プロファイル”
EMET 3.0 では、3 つのプロファイルを提供しています (下述)。これらプロファイルは、よく使用されるマイクロソフトおよびサードパーティ アプリケーションに対し、予め EMET の設定を構成した XML ファイルです。EMET をインストールしたディレクトリ配下の Deployment\Protection Profiles に含まれています。プロファイルを修正したりこれを基に他のプロファイルを作成したりできます。プロファイルの中身を見るとどのアプリケーションに対してどの緩和策が設定されているかも確認できます。
- Internet Explorer.xml: サポートされたバージョンの Internet Explorer に対する緩和策を有効にする
- Office Software.xml: サポートされたバージョンの Internet Explorer、Office スイートに含まれる製品、Adobe Acrobat 8-10、Adobe Acrobat Reader 8-10 に対する緩和策を有効にする
- All.xml: Internet Explorer や Office など、一般的に家庭や企業で使用されるアプリケーションに対する緩和策を有効にする
2.グループ ポリシーや SCCM との連携
以前より、EMET を組織で容易に展開できるようにしてほしいというご要望をいただいていました。V3.0 では、上述の 3 つのプロファイルを含む ADMX ファイルを含んでおり、Active Directory グループ ポリシーにより組織に展開できます。独自の EMET の構成を展開するためのポリシーも含まれています。また、System Center Configuration Manager との連携も追加されています (詳細は SCCM チームのブログをご参考ください)。
今回の連携により、管理者は組織への展開や構成変更、また EMET インストールの監視が容易に行えるようになります。
3.レポーティング機能
EMET Notifier という機能が追加されました。以下の 2 つの機能があります。
- EMET に関する情報をイベント ログに記録する: アプリケーション イベント ログに EMET というイベント ソースで記録されます。情報 (EMET Notifier が開始した、等)、警告 (EMET の構成が変更された、等)、エラー (EMET の緩和策によりアプリケーションが停止した場合等) の 3 種類あります。
- タスクバー付近に通知メッセージを表示する: EMET はアプリケーションを停止させることで Exploit (悪用) を阻止しますが、そのような時にポップアップの形でユーザーのタスクバー付近にメッセージが表示されます。
その他お伝えしたいこと
- EMET v3.0 は Windows 8 Consumer Preview に対しても問題なく利用できることを確認済みです
- EMET v2.1 がインストールされている環境でも問題なくインストール (アップグレード) でき、設定も引き継がれます
- EMET はマイクロソフトが公式にサポートしているツールです
是非、使い勝手も良くなった EMET を一度お試しください。
リソース
Introducing EMET v3: このブログで説明している内容が詳細に書かれています
新ガイダンス公開 -「ソフトウェアの脆弱性を緩和する」って?: EMET に含まれるどの緩和策がマイクロソフト製品の OS やアプリケーションで有効になっているかについての表があります